Archive for the ‘ニュース’ Category

土曜日, 2月 10th, 2018

拙宅では、某全国紙を配達していただいています。毎日毎日、きちんと新聞が届くというのは、人力に頼らざるを得ず、大変なことです。

ブルゴーニュ大学での醸造留学から帰国して以来、それまで以上に土いじりが好きになりました。わたくしのガーデニングの先生は、近くの梨農家のおばあちゃん。おばあちゃんによると、どんな植物でも木の心の中に暦を持っていて、外のお天気と少しずつ調節しながらも、暦通り一年を送り、育っていくのだとか。人間はその暦のおこぼれを頂いているだけなんだそうです。

我が家には、14,15坪の庭と2-3坪の前庭(道路から玄関までのアプローチの間だけ)があるのですが、午後、前庭の世話をしていると4時に近い3時台に来るのが、新聞配達の叔父さん。拙宅のポストに新聞を入れるにはバイクを降りなければならないので、こちらから行って受け取るようにしていたところ、いろいろよもやま話をするようになりました。
右足が悪く、バイクの乗り降りがつらいこと、家族はおらず一人暮らしであること、自分も昔は土いじりが好きだったが狭いアパート暮らしなのでできなくなったことなどなど。


ところがつい先日、この叔父さんではなく別の方が夕刊を持ってきました。

「あれ、前の叔父さんどうなさったんですか」
「えっ」
「あの少し足の悪い背の低い方」
「あぁ、私の前にここを担当していたひと、・・・・・・亡くなりました」
「えーーーっ?」
「亡くなったんです、あの大雪で」

確かに、最近見たのは大雪の前日でした。その時は窓から見かけただけで、
声はかけられなかったのですが・・・


要領を得ない新しい配達員の話をまとめるとこういうことでした。

叔父さんは大雪の日いつものようにバイクで朝刊を持って出たのですが、
途中で帰ってきました。雪で滑って転び、頭を打ったというのです。
販売店の人はすぐに別の人間を手配し、叔父さんを家に帰し、夕刊配達も休むように
伝えました。しかし、叔父さんは翌日朝刊配達の時刻になっても姿を見せませんでした。
心配になった販売店の人が叔父さんの部屋を訪れると、叔父さんは風呂場で倒れ、
息をしていなかったそうです。

新しい配達員の方は、死因やご親族のことは何も知らない様子でした。

名前も知らない新聞配達員の”叔父さん”ですが、その叔父さんは、間違うことなく
私の土いじりや、日曜大工、近所の山の散歩、庭に作ったテーブルセットでのコーヒー
などと一緒に、確実に私の日常の一部だったのです。
逆に叔父さんの方も配達中におしゃべりするのは私だけ。叔父さんの世界では、
話し相手は販売店の仕事仲間と私だけということでした。

本当に人の死は突然訪れます。こちらが身構えていても、身構えていなくとも、
やはり突然です。

叔父さんが、免許証の入った財布を落としたときは、紛失時の再交付の手続きを
警察に聞いてあげました。、叔父さんが近所の交番で紛失届を出していた所、
3日経ってどなたかが届けてくれたのですが、免許証が見つかった日叔父さんは嬉しそうに
「免許証ありました。」
といつもでは信じられないような大声で伝えてくれました。


ある日叔父さんに年齢を聞くと●●歳とこたえました。
「それじゃあ、寅年?同学年じゃないですか。それにしてはおじいちゃんですねぇ」
「しょうがないですよ、苦労しましたから。今なんて楽な方です。夕方3時ごろから、そして夜は2時半位からこうして配達をすれば、生きていけるんですから。年金ももらえないし。この仕事頂けてずいぶん楽になりました」

無くなったとお聞きしたその時、
新聞配達の仕事で「楽になった」と笑った叔父さんの笑顔が一瞬蘇りました。

巴里の大雪10景

土曜日, 2月 10th, 2018

東京地方の雪による大混乱、日本海側の豪雪による道路の大渋滞や何百台もの立ち往生。この冬は雪害の報告が枚挙にいとまがありませんが、遠くパリでも市内は真っ白に。凱旋門やエッフェル塔も雪化粧です。
翌日には雪はピレネー山脈を越え、スペインへ。パルセロナの市街や海岸も。サグラダファミリアも雪景色の中に。

パリの街はゲレンデ状態

高速道路のお巡りさん

サクレクールでは大回転

巴里の名所も雪景色





自転車も・・・

スクーターも

車も・・・
この日パリ周辺では延べ700キロ以上の大渋滞

そしてスペイン・バルセロナでも
旧市街のメインストリートで

海岸も

サグラダファミリア前で雪合戦

ミシェラン2018 日本人シェフ大躍進

木曜日, 2月 8th, 2018

パリとその近郊が大雪に見舞われたその日、ミシェランはフランス全土で50人のシェフが新たに一つ星を獲得したと発表しました。
こうしてみると今年も日本人シェフの躍進が目立ちます。(カッコ内はレストランの所在地です)

フランス北西部
•Jean-Sébastien Monné, chef de l’Auberge de Bagatelle (Le Mans),
•Christophe Le Fur, chef de l’Auberge Grand Maison (Mûr-de-Bretagne),
•Charles et Mi-Ra Kim Huillant, chefs de L’Essentiel (Deuville),
•Julien Lemarié, chef d’Ima (Rennes),
•Nicolas Durif, chef de L’Hysope (La Rochelle),
•Michael Marion, chef d’Intuition (Saint-Lô),
•Anthony Lumet, chef du Pousse-Pied (Tranche-sur-Mer).

フランス北東部
•Jérôme Feck, chef de L’Angleterre (Châlons-en-Champagne),
Takashi Kinoshita, chef du Château de Courban (Courban),
•Cédric Deckert, chef de La Merise (Laubach),
•Abdelkader Belfatmi, chef du Marcq (Marcq-en-Barœul),
•Sébastien Chambru, chef de L’O des Vignes (Fuissé),
•Patrick Fréchin, chef de Transparence, “La Table de Patrick Fréchin” (Nancy).

パリとパリ近郊
•Andreas Mavrommatis, chef de Mavrommatis (Paris 5e),
•Massimo Mori, chef d’Emporio Armani Caffè (Paris 6e),
•Antonin Bonnet, chef du Quinsou (Paris 6e),
•Maxime Laurenson, chef de Loiseau Rive Gauche (Paris 7e),
Ryunosuke Naito, chef de Pertinence (Paris 7e),
•Andreas Møller, chef de Copenhague (Paris 8e),
•Christopher Hache, chef de L’Ecrin (Paris 8e),
•Inaki Aizpitarte, chef du Chateaubriand (Paris 11e),
•Bruno Verjus, chef de la Table (Paris 12e),
Takayuki Nameura, chef de la Montée (Paris 14e),
•Alan Geaam, chef d’Alan Geaam (Paris 16e),
•Noam Gedalof, chef de Comice (Paris 16e),
Keisuke Yamagishi, chef d’Etude (Paris 16e),
•Laurent Magnin, chef de L’Arcane (Paris 18e),
Ken Kawasaki, chef de Ken Kawasaki (Paris 18e),
•Jean Chauvel, chef de Jean Chauvel (Boulogne-Billancourt, 92),
•Franck Charpentier, chef du Quincangrogne (Dampmart, 77),
•Julien Razemon, chef du Domaine de la Corniche (Rolleboise, 78).

フランス南西部
•Tanguy Laviale, chef de Garopapilles (Bordeaux),
•Philippe Etchebest, chef du Quatrième Mur (Bordeaux),
•Jérôme Ryon, chef du Barbacane (Carcassonne),
•Erwan Houssin, chef du Grand Cap (Leucate),
•Gilles Dudognon, chef de la Chapelle St-Martin (Limoges),
•Renaud Darmanin, chef de l’Auberge de la Tour (Marcolès),
•Julien Lefebvre, chef du Château de Cordeillan-Bages (Pauillac),
•Christophe Schmitt chef de L’Almandin (St-Cyprien),
•Guillaume Momboisse, chef de SEPT (Toulouse),
•Nicolas Thomas, chef de La Promenade (Verfeil),
•Michel Vico, chef du Jasmin (Villeneuve-sur-Lot).

フランス南東部
•Gérald Passedat, chef de Louison (Aix-en-Provence),
•Matthieu Dupuis Baumal, chef de la Table de Manville (Baux-de-Provence),
•Romain Hubert, chef de L’Émulsion (Bourgoin-Jallieu),
•Patrice Vander, chef des Fresques (Évian);
•Dorian Van Bronkhorst, chef de L’Atelier Yssoirien (Issoire),
•Nikolaz Le Cheviller, chef d’U Santa Marina (Porto-Vecchio, Corse),
•Mathieu Pacaud, chef de La Table de la Ferme (Sartène, Corse),
•Christophe Martin, chef de Lou Cigalon-Maison Martin (Valbonne).

去年はホテル・プラザ・アテネの小林シェフが二つ星に昇るなど、フランス本土での日本人シェフの努力がしのばれます。

一方で、今年はフランス全国で18のシェフが星を失いました。みなさま、ご存じのところもあるかもしれません。

•L’escargot 1903, Puteaux (Hauts-de-Seine)
•Les Fables de La Fontaine, Paris 7e
•Le Relais d’Auteuil, Paris 16e
•Sola, Paris 5e.
•Le domaine la Bretesche, Missillac (Loire-Atlantique)
•Le château de Noirieux, Briollay (Maine-et-Loire).
•Le Château de Germigney, Port-Lesney (Jura)
•La Maison des Cariatides, Dijon (Côte-d’Or)
•Charlemagne, Pernand-Vergelesses (Côté-d’Or)
•La Laiterie, Lambersart (Nord)
•La Briqueterie, Vinay (Marne)
•Château de Montreuil, Montreuil-sur-Mer (Pas-de-Calais).
•Octopus, Béziers (Hérault)
•L’Auberge Labarthe, Bosdarros (Pyrénées-Atlantiques)
•L’Oison, Chancelade (Dordogne).
•Bacon, Juan Les Pins (Alpes-Maritimes)
•Chez Charles, Lumio (Corse)
•L’Alexandrin, Lyon (Rhône)
•La Ciboulette, Annecy (Haute-Savoie).

そして、先日亡くなった「ガストロノミーの法王」ポール・ボキューズのメインレストランl’Auberge du Pont de Collongesは、シェフの死後にもかかわらず三つ星を獲得しました。今年の三ツ星レストランはフランス全体で28となります。

広辞苑第七版で思い出した22年前のある事

火曜日, 1月 30th, 2018

1月12日、10年ぶりに改定版が出版された岩波書店の『広辞苑第七版』にはおよそ1万の新語が掲載されたそうです。しかし、その中の二つの意味が間違っていると指摘され、話題になっています。25日に岩波書店はこの過ちを認め、岩波の公式サイトに訂正を載せる一方で、次版では訂正する旨の声明を出しました。
ワインを長く愛されている方ですと、岩波が間違った、と聞くと「そういえば・・・」と思い出すことがあるのではないでしょうか。

その本とは1996年に刊行された岩波新書『ワインの常識』で、帯には「ワインは難しいか?日本人のためのワイン入門」と謳っています。ちなみに岩波の公式サイトでは<ワインというと肩に力が入りがちだが,こよなく楽しいこの「液体の食物」をもっと気軽に生活にとり入れるにはどうしたらいいか.それにはワインは難しい,ワインは銘柄ものに限るといった偏った常識から自由になる必要がある.豊かな実践経験をもつ著者が,日本人ならではの仕方でワインに親しむための知識と知恵を伝授する.>と紹介されています。あの岩波新書がワインの本を出すというので、当時注目を集め、ソムリエの資格を取って2年目の私も、すぐに買いに行ったものです。確か9月頃の発売だったと思いますが、年を越すころには、10刷となっていた記憶があります。それだけ注目され、売れたということです。

ところが、読み始めてすぐに眉をひそめるような表現や、誤りに出くわしました。私はすぐに間違いをチェックするために、もう一冊買い足すと同時に、知り合いの割とインテリなワイン好きの人々に連絡を取ってみました。中には同じようにこの本に違和感を感じている人もいました。暫くすると知人である著名なワイン・マニアがこの本の誤りを書籍にするためにまとめている、という情報が入りました。当時、まだ電子メールなんていうものはありませんので、私が確認した部分をその方にお送りいたしました。

この本は220ページの新書としては標準的な分量です。しかし問題はその誤りの数でした。『広辞苑第七版』は新しく追加された1万語の中で過ちは二つ。『ワインの常識』の場合は、優に200を超えるのです。

間違いがあると気づいて、探し始めると、面白いことに、間違いと断定する物差しがだんだんとぶれてきます。また、読む人によっても間違いではないが表現が妥当ではない、などというところまで、誤りに分類されてしまいます。いろいろ聞いてみましたが、この岩波新書の『間違い』は200から270と言ったところでした。まぁ、コンスタントに、1ページに一つ間違いがあると思って宜しいでしょう。こんな『ワインの常識』の本ですから、ワイン初心者にはとてもお勧めできません。「日本人のためのワイン入門」なんてとんでもないことです。ただし、長くワインを学んでいらっしゃる方、ソムリエ協会の資格でも取ってみようという方にはぜひお読みになることをお勧めします。<ワインの常識>に関する非常に良い問題集と言えます。残念なことに、現在書店では手に入りません。岩波の公式サイトでは、絶版ではなく、品切れとなっています。権威ある岩波新書、200を超す誤りを認めたくないのでしょう。

それではどのようにこの問題集を手に入れたらいいのでしょう。ご安心ください。amazonで何と1円から中古を買うことが出来ます。
問題集を買ったはいいが、答え合わせは??これもご安心ください。人間の科学社から『岩波新書「ワインの常識」と非常識』という本が出ています。これもamazonで中古本をお探しください。

話は、『広辞苑第七版』に戻ります。こうした出版社が力を入れている本を出す際には、出版社側は販売協力費という「お金」を書店側に出すことが往々にしてあります。『広辞苑第七版』の場合、岩波書店が出すのは、20部売ると、5000円、100部売ると3万5千円、500部売ると25万円という具合になっています。
『広辞苑第七版』は普通版が9000円ですから、500部ですと、4,500,000円売り上げると25万円キックバックがあるということです。
その分安くするか、間違えたところを直せるようなシールでも配ればいいと思うのですが。サイトで公開しておしまいにする、というのは、岩波書店というのはどこまで読者のことを考えない出版社なのでしょうか。

ちなみに、私の手元にあるのは大学時代から使っている第四版、電子辞書の中に入っているのは、第六版です。よく使うのは、三省堂の『国語辞典』です。

フランスで乳児用ミルクからサルモネラ菌

月曜日, 1月 15th, 2018

 

パリ近郊に住む私の若き友人が12月末元気な男の子を産んだという喜ばしいニュースが届きました。3500g、51,5cmだそうです。大きいですね。

さて、そんな赤ちゃんを持つお母さん方に心配な事件がフランスで持ち上がっています。大手乳製品メーカーの乳児用の粉ミルクがサルモネラ菌に汚染されていたというのです。

この話はやや複雑です。去年8月大手メーカーのLactalisが自社で行った検査で、サルモネラ菌を発見したものの、Lactalisは「サルモネラ汚染の報告は法律で義務付けられていない」と主張、当局に届け出ることをしませんでした。しかしその後、特ダネで有名なフランスの週刊紙カナール・アンシェネ(Le Canard Enchaine)は、当のLactalis自身が認めているのもかかわらず、政府の検査官が昨年9月上旬に北西部クラオン(Craon)にあるラクタリスの工場に問題なしとの証明書を与えていたと報じたため問題は大きくなりました。

その後の報道によりますと、汚染は、クラオン工場の乾燥施設で5月1日から6日にかけて発生したと考えられています。また8月と11月に工場で採取された標本から、サルモネラ菌が発見されましたが、Lactalis社によりますとこれは製品自体ではなく、清掃具と床から採取された標本であるとのことでした。

しかし、実際にフランス国内で乳児の被害が報告されるようになったのです。フランス当局の発表では、フランス国内で35人の乳児のサルモネラ菌による被害が確認されたほか、スペインでの1人の被害が報告されています。
こうした被害を受け、昨年12月中旬、Lactalis社は、同社の「Milumel」「Picot」といったブランドの乳児用ミルクを昨年12月中旬、世界規模でのリコール対象としました。

最近の報道(2018/01/14)では「影響が及んでいる国々は83か国に上っており、これらの国々ではこれまでに粉ミルク1200万箱が回収された」とのことです。

ミルクの汚染というと、「森永ヒ素ミルク事件」を思い出します。事件の発端は1955年ごろでした。事件は西日本を中心に表沙汰になりました。わたくしは小学一年生でしたが、新聞やラジオで大きく扱われるようになった頃妹が生まれたので、ひとごととは思えず、子供心に心配したのを覚えています。
妹が産まれた1956年には、ヒ素中毒となった乳児は13,000人、死者は130人に上りました。しかし、今から思えばこの頃はまだ水俣病でさえ顕在化する前でした。被害者には、満足のいく救済措置は取られませんでした。
しかし、1970年ごろになると、中毒者の中に明らかにヒ素中毒による後遺症が出ていることが確認され、「消費者運動」から裁判闘争、森永製品不買運動へと広がりを見せました。
運動は、あの中坊公平弁護士が中心になって続けられ、1973年には森永ミルク中毒の子どもを守る会(、国、森永乳業の三者により、「確認書」が締結され、被害者を恒久救済することで合意し、森永乳業は救済資金を拠出することを約束することになりました。

乳児用ミルクにヒ素が混入した現場である徳島工場が閉鎖されたのは、2011年、死者が出てから55年後でした。

Lactalis社のミルクは日本には入っておりません。工場は違うので問題はないとは思いますが、PRESIDENTというブランドのチーズはLactalis社のものです。■